一般ダイアコプティックス的刻接による, 高次擾乱を含む塑性物質多様体の表現について
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概要
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連続体力学では, 加えられた外力と, それによる物体の変形との関係を規定することが重要な問題となる。結晶体であれ, 非晶質の固体であれ, 加えられた外力が小さいときは, それを構成する原子間の位相的関係を保存するような, ホロノームな変形をすると仮定し, 応力と歪との線形関係を前提とした弾性論が有効である。この場合, 変形は, 変位ベクトルμ_i (i=1,2,3)によって記述され, 歪の状態を表わす歪テンソルはε_<ij>=∂_<(iμj)>≡1/2(∂_iμ_j+∂_jμ_i), で与えられる。ところが連続的微分可能な変位μ^iの場合では, 原子配列のなす格子構造を保存しないような微視的変形を, 規定することはできない。そして物体の塑性的性質とかかわりのある, 微視的状態を規定できないならば, 応力と歪との関係を有効に論ずることは不可能になる。さて, 東京大学教授工学博士近藤一夫先生によって, 塑性状態の一つの表現として, 非ホロノームな変形という概念が導入され, 微分幾何学的関係によって, 塑性状態を特微づける立場が確立された。そして, この見地から塑性的現象の解明が多くの研究者によって行なわれた。一方, 変位場μ^iの2階以上の微係数が関係するような現象に対してCosserat連続体論を始めとする, 一般化連続体力学という立場からのアプローチが, 最近多くなされている, 後者は, より微視的な高次自由度の導入を図るものであるが, 結局, 前者の幾何学的立場に帰すべきものと考えられる。塑性多様体を表わすリーマンあるいは非リーマン空間の幾何学的な構造は, 連続体を微小な素片に刻接するという, 思考実験的な操作により定義される。著者は刻接の概念を一般化して, より高次の塑性的不整を規定するような, 幾何学的に不変な変形量を導入し, より微視的な擾乱を包含する連続体変形論への一つの幾何学的アプローチを展開する。なお, この研究に際して, 近藤一夫先生の御指導と, 相模工業大学教授理学博士河口商次先生の御助言を得たことを文頭に述べ, 感謝の意を表わしたいと思う。
- 湘南工科大学の論文
- 1971-03-31