放物型微分作用素について
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概要
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この論文では主として二つの微分作用素Λ_p, Ωについて考察する。ただしpは正の奇数とする。Λ_pは変数係数の放物型作用素で, 準constant strengthである。つまり, p>1ならば, Λ_pはn次元のクークリッド空間E^n内では, どんな直交座標系に対してもconstant strengthではないが, 適当な変数変換によりconstant strengthな作用素に帰着する。Ωはリーマン多様体M^n上の微分形式に対する微分作用素であり, 互に随伴な定係数の放物型作用素Λ, Λ'の積, すなわち, 準楕円型作用素ΛΛ'の一般化と考えられる。尚Λ自身を直接M^n上に拡張することは困難のように思われる。順を追って次に内容を説明する。§1 は導入で, 以下の§の紹介である。§2 では基本解の台が半空間内に入る微分作用素の一つの族が, ある条件を満足するような∂^k/∂r^k, k=1,2,…で示される事をのべる。§3 では基本解の台が半空間内に入る作用素として知られている二つの作用素, すなわち, 熱の放物型作用素Λおよび波動の双曲型作用素∇が∂/∂rに帰着することを示す。§4 では双曲型作用素∇の基本解を表現するための, よく知られたM. Rieszの超函数Z_lに倣って, p=奇数>0のとき, 超双曲型作用素口の基本解を表現するために役立つ同様な超函数_pZ_lを考察し, その明瞭な表現を求める。この基本解の表現はde Rhamやその他の表現と多少異る種類のものである。§5 ではp=奇数>0のとき, _pZ_lを用いてΛ_pX=δの解_pX_2(l), ならびに, 一般に(Λ_p)^hX=δの解_pX_<2h>(h)を求める。_pX_<2h>(h), h=1,2,…は半空間内に台をもつ超函数の一つの族を形成する。更に(Λ_p')^h・φ=f, f⋴D, の解φを_pX_<2h>(h)により表現することについて考察する。なお∧_1'は形式的に∧によく類似しているが, 厳密には異質のものであることを注意する。§6 ではΩについて考察する。小平氏によりはじめてM^n上に定義された, よく知られている作用素Δ=dδ+δdとよく似ているが, 本質的に異る作用素∇=doδo+oδodを定義する。つまり, Δとちがい, ∇は特定の基本微分形式の系に強く依存する。ΩはこれらのΔと∇の組合せにより定義される。次にΩのパラメトリックス_qΩ_lを定義し, 更にΩφ=0を満足するような微分形式φの測地座標に関する微分可能性についてのべる。§7 ではコンパクトなリーマン多様体M^n上のC^∞の形式のつくる準ヒルベルト空間HのΔによる分解, に倣って, ΩによるHの分解について考察する。更にΩφ=0を満足する形式φのつくる部分空間F_1の構造に言及する。しかしΩはどのようなリーマン多様体に対しても, 特にコンパクトの場合に, その全体の上に大域的に定義できるとは, 必ずしも保証されない。しかしながら, n次元のトーロイドの場合には, 明らかに, その全体の上に定義される。したがって, Ωの定義されるコンパクトなリーマン多様体は確かに存在する。よって, §7における展開は十分意味をもつことがいえる。
- 1967-03-31