<事例研究>聴覚障害幼児の言語発達に関する研究 : 母親・教師との対話の比較から
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概要
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聴覚障害幼児にとって言語獲得は大きな課題である。そこで,言語習得期にある聴覚障害幼児と聴覚障害をもつその母親,聴覚障害幼児と教師(学級担任)のホットケーキづくりと自由あそび場面でのコミュニケーション活動を30分間VTRに収録し,文字化して,そのやりとりを比較検討した。発話の表現形態においては,幼児は母親には言語的表現と前言語的表現を使用する割合が多いのに比べ,教師には非言語的表現を使用することが多かった。発話の機能においては,幼児に対して,母親の場合は要求>応対>報告の順であり,教師の場合は要求>報告>応対の順であった。幼児は母親に対しては,ホットケーキづくりでは応対的発話が多く,自由あそびでは自発的発話が多かった。一方,教師に対しては両場面とも対人関係行動が多かった。また,コミュニケーションの成立においては,幼児からの発話は,母親,教師によって74〜98%も受信されていたが,母親,教師からの発話は,半数近くが子どもに受信されていなかった。以上の結果より,幼児は相手によって必要に応じたコミュニケーション活動をしていることがわかり,母親,教師の比較からは,その働きかけに質的なちかいがあることが見いだされ,そこから聴覚障害幼児の今後の言語活動を豊かにしていく手がかりが示唆された。
- 北海道教育大学の論文
- 1989-03-11