Iちゃんの言語理解のための試み : 言葉の広がりを求めて
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概要
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幼児期における言葉の発達とその障害については,障害児教育の最も重要な課題の1つである。本論は,話し言葉獲得期の発達課題を持つ子どもについて,実践現場での指導に学びながら,いくつかのはたらきかけを行った結果をまとめたものである。市内の通園施設「M学園」で,4歳になる女児Iちゃんと,約8か月にわたってかかわりを持った。その期間を便宜上3つに分け,第1期…「ラポートの形成」,第2期…「言葉でのアプローチ」,第3期…「言葉の発展」の中で,Iちゃんに言語面へのはたらきかけを行っていった。自作遊具などによってはたらきかけを行う中で,時間がたつにつれて,Iちゃんのロからはその場面に応じた言葉が数多く出る様になってきた。はたらきかけを行った結果,言葉の発達を支える上では,子どもを取り囲んでいる大人が,(1)子どもの表情,しぐさ,カタコトなどにコミュニケーションの欲求を感じとる様に努め,その場に即した言葉かけをする,(2)子どもにいろいろな経験の場を与える,(3)子どもに楽しい遊びの世界を与える,ということを心がけることが大切であることが分かった。そして,改めてそのかかわりの様子を振り返ってみると,筆者からのはたらきかけは,Iちゃんが持っていた言語能力の一部を筆者自身が発見していく過程でもあった。Iちゃんとのかかわりを通し,身をもって,言語指導の難しさを知ると共に,子どもの能力を発見することの大切さを感じとった。
- 北海道教育大学の論文
- 1988-03-15