重症心身障害児Nちゃんに学んで : 対人的興味に注目して
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概要
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重症心身障害児は,生きることの原点について,私達に深く考えさせてくれる。本論は,発声がなく,寝たきりで,経管にて栄養を摂取する重症心身障害児Nちゃんとの,つきあいの記録である。この中では,Nちゃんが「できること」に注目し,「より深くわかる」ための試行錯誤を通して,つきあいを深めた。(1)「緊張と探り合い期」-9回,(2)「緊張の緩和期」-9回,(3)「安定期」-12回の3期にわたる計30回のつきあいの中で,相互交信関係をつくり,Nちゃんの対人的興味の範囲が拡がるなどの経過をたどった。(1)期では,Nちゃんの拒否反応に対して「同じ部屋の中にいる」という程度の距離を置くことからアプローチを始め,徐々に注意を向けさせた。(2)期では,Nちゃんを抱き上げての散歩により,二人きりの時間に慣れ,視線を合わせたり,同じ物を見つめるなど,準備段階としての共有態を相互に育てた。そして,カザグルマを媒介として,相互に楽しみながら遊ぶという経験もできた。(3)期では,二人の間で散歩が習慣となり,その中でちゃんに要求や甘えが出始め,対人的興味の範囲も,職員から私を含む職員以外の人間へ,大人から他室の園児へと広がってきた。
- 北海道教育大学の論文
- 1988-03-15