発達障害児におけるソーシャルゲームに関する一考察 : イナイイナイバーと象徴機能の関連について
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概要
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子どもの遊びは,言語や社会性などの発達と密接な関連があるといわれている。しかし,発達障害児においては,その障害が重くなればなる程遊べないという問題が生じてくる。その原因については,遊びが広がる為の条件として不可欠な象徴機能の発達に問題のあることが多いためとされている。そこで本研究では,発達障害児における象徴機能の発達を調査すると共に,それが獲得されつつある時期に好まれるといわれるイナイイナイバーゲーム及びそれと関連する行動について同時に調査を行い,それらの間の相互関係を検討することを目的とする。調査は,イナイイナイバー及びその関連行動と象徴機能の発達について独自の尺度構成を行い,それぞれに対する質問紙を作成し,それを用いて精神遅滞児を持つ母親25名と個別に面接を行った。その結果,次の諸点が明らかになった。(1)それぞれの尺度における結果を発達別に3群に分類し比較検討した結果,3者間に密接な関連がみられた。(2)それぞれの尺度の項目を段階分けし,出現時期による比較を行った結果,象徴機能とイナイイナイバー行動については,尺度の発達と年齢の発達とに関連がみられ,イナイイナイバーと関連する行動については,一定時期に集中して行動が現れるケースが比較的多くみられた。以上から,イナイイナイバー行動と象徴機能の発達には密接な関係のあることが窺える。このような結果から,各種のイナイイナイバー行動が象徴機能の獲得に少なからぬ影響を与える可能性があると考える。このような観点から,イナイイナイバーをひとつの教材として体系化し指導に取り入れたならば,発達障害児の教育に新たな手がかりを見出すことができよう。
- 1987-03-15