家族における人間関係に関する一考察
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概要
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急激な産業化の進展のなかで形成されてきた現代の家族は,核家族化への移行と同時に,男女の性別役割分業をより明確にするという形態上の変化を必然的なものとした。加えて,女性を「家」に帰属させる考え方のつよいうえに,今日,家族を取りまくこうした諸状況の推移は,家族とそこにおける人間関係に深い矛盾とひずみを引起こすに至っている。年々,増大し続ける共働き家族は,1千万世帯をこえ,家族内に子どもの保護・育成と,家事労働等を通した夫婦関係に関わって,問題を複雑化し新しい危機を生み出している。また,夫は"仕事人間",妻は"家庭人間"というふうに分離させられてきた夫婦の間では,相互の人間的関わりを時間的にも少くし,したがって理解し共有しあう世界が狭隘であるということによる,さまざまな人間関係の交流の貧しさを浮かびあがらせている。このような夫婦の阻害関係のなかで,また,強要される母親役割のなかで,育児を担わされる女性が,子どもとの母子一体化を進めることにより,子どもの自立を阻むという事態をもつくり出している。こうした家族内にもたらされる人間関係の問題点,矛盾点を今後どう克服していったらよいのか。近年,男女平等化を志向する活発な論議と動きが展開されているけれども,各々の存在を損うことなく結びあえる関係づくりの模索のなかから,これからの家族の姿もあきらかになってくるにちがいない。
- 北海道教育大学の論文
- 1986-03-15