障害児をもつ親の意識に関する一考察
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概要
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障害児・者の福祉と教育は,関係各者の手によって年々充実し,最近では国際障害者年を契機に一般社会の理解が深まり,障害者の生活空間がより一層拡がっているようにうかがえる。これにくわえて,障害の重度・重複化,多様化により,これに対応した福祉ならびに教育施設の整備拡充が求められている。たとえば,障害児教育(保育),治療,訓練,スタッフの専門性などの諸問題がある。本研究のねらいは,障害児(脳性マヒ児)をもつ親の経験ならびに子育てを生きた教訓とし,子どもが生まれてからの親の悩みやその子の治療・訓練などの経過を明らかにし,その望ましい教育と養育のあり方をめざしたものである。面接結果によると脳性マヒ児をもつ親の共通する問題は,健常児をもつ親や,一般社会の人達に対して劣等感や情緒的葛藤などがあることであり,また冷静な認識ができにくいなどの問題があることがわかった。他方障害児をもつ親達をこのような方向に駆りたてる一般社会の人々の意識や態度にも大きな責任があるように思われる。子どもが脳性マヒ児と診断されると同時に,両親がその事態をすみやかに理解し障害に応じた適切な訓練ができるような指導が求められる。障害児をもった親は養育に困惑し,どう対処したらよいか迷うことが多いのである。したがって親の不安を除去し精神的に安定させるためにも早い時期での親のカウンセリングの必要性も求められている。
- 1986-03-15