障害者の高齢化・老化をめぐる諸問題 : 精神薄弱者を中心として
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概要
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最近,精神薄弱者援護施設において,在所者が高齢化してきており,また,精神薄弱者は老化が早いということも,経験的に認められているところである。本研究は,精神薄弱者を中心に,障害者の高齢化・老化をめぐる諸問題を明らかにするために,その親と施設職員に対し,アンケートと面接により,その実態調査を行った。肉体的老化の状態を把握するために,櫻井らの開発した「精神薄弱者用外観的老化徴候測定尺度」を使用し,12分類19項目について調査した。その結果,年齢と共に,また障害の程度が重度化すると共に,年齢相応以上に老化が目立つ者が増加するという点が明らかになった。また,親に対するアンケート調査でも,早期に老化現象を認める者があり,生涯,面倒をみてくれる施設の存在が,親のニーズであることが明らかになり,一方で,親の方の高齢化・老化に伴なう問題も表面化してきていること,施設においても,年齢層の幅が広がり,日常生活や作業の面で配慮が必要と思われる者が出てきたことなどから,「高齢者処遇施設」を新たに設けたり,これから増築にふみ切りたいと考えていることが,明らかになった。以上のことから,施設において,さらに在宅の者においても,早期老化現象をふまえつつ,一人ひとりに即した高齢者処遇対策の確立が今後の課題となってくると思われる。
- 北海道教育大学の論文
- 1985-03-15