人格とは何か : 障害者に対する現代社会の処遇と子どもの否定的現象をとおして
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概要
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教育基本法の制定により,教育の目的は人格の完成をめざすという点が明らかにされ40年近くたとうとしている。しかし,現実の社会状況をみていくと,教育基本法の理念とは,逆行しているように思える。それを端的にあらわしているのが障害者に対する社会の処遇と子どもの否定的現象である。障害者も子どもも社会にとっては弱者である。社会に問題があれば,矛盾が集中するのは弱者であるという視点にたち,障害者に対する社会の処遇と子どもの否定的と思われる現象に焦点をあて,その要因を検討した。その中で明らかにできたことは,(1)人のいのちを大切にできない,(2)健常者の方が障害者より人間として価値が高いと考えられている,(3)今の子どもたちは能力主義のもと,やる気を失わさせられている,(4)愛に基づいた人間関係を形成できなくなっている。以上の4点である。現代の障害者に対する社会の処遇と子どもの否定的現象を解決する方向は,人間の本質に基づいた人格の尊厳を回復することである。そこで,上記の4点と人格諸理論をふまえ,人格を「人間として愛とやる気をもち,自他共に愛せることが土台となる。そして,他の人から人間として価値を認められるとともに,自らの価値を認めることができる主体」と考えた。人格の尊重される社会は,おそらく自由で平等な社会であろう。人格の形成は,社会をどう発展させていくかという点と密接な関係にある。個の人格形成と社会の発展をどう関連させるかが,今後重要になってくる。
- 1985-03-15