登校拒否児の自己認知
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概要
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登校拒否が,大きな社会的問題としてクローズ・アップされて久しい。現在までに,成因論については様々な研究がなされてきているにもかかわらず,それが必ずしも治療に結びついていないように思われる。そこに,今後の課題が残されている。本研究では,自己理論の立場に立ち,登校拒否児が自分自身をどのように規定しているのかという側面を,投影法心理テストSCTの記述から探り出そうと分析を試みた。SCT50項目のうちから,自己認知に関する23項目を抽出し,梶田の自己把握の主要様式に従って6つの側面から分析した結果に基づいて考察を行った。その場合,登校拒否児を臨床型によってA群(精神病的なもの),B群(神経症的なもの),C群(性格傾向に問題のあるもの),D群(怠学傾向の強いもの),E群(その他)の5群に類型化し,各群ごとの比較と登校拒否全体を総合した分析に焦点をあてた。その結果,(1)ネガティヴな自己規定の反応が各項目で顕著であり,学校に行けない自分を否定的に評価している,(2)完全癖が強く,失敗や受け入れられない状況への耐性がなく,挫折感が大きい,(3)繊細すぎるがゆえに傷つきやすく,人が自分をどう見ているのかということに非常に敏感である,(4)学校場面では,自分から話しかけることも少なく,緊張しており,家庭に安らぎを求めているにもかかわらず家での自分をもネガティヴにとらえている率が高い,(5)勉強に対して意欲をもっていると思われるのがB群であり,(6)D群は学力遅滞が著しく,孤立の傾向を示している,(7)C群は,子供の頃の自分を肯定的に見ている率が高かった。われわれは,登校拒否児の不登校という現象のみにとらわれることなく,自己実現を目ざして成長している発達過程でのつまずきに対する自然な防衛反応としてとらえ,真の意味での子供の内面的成長とは何かということを常に考えて対応していく必要が,あると思われる。
- 北海道教育大学の論文
- 1985-03-15