障害児教育における「音楽遊び」の展開 : ミュージック・ムーブメントの理論から音楽指導の障害種別実践法を探る
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概要
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本論は,子どもに多くの経験をさせることを教育の原点と考える筆者が,その一部分である障害児の音楽指導について,楽しく音楽を体験させようという立場から,「障害児のための音楽指導の参考書」を編集しようと試みたものである。制作にあたっては,子どもの生活の中心である「遊び」に着目し,音楽を使った遊びであることをその第一条件とした。また,子どもの実態に応じて内容を変化させられるような題材を選定した。次に,より実践的であることを目指し,いくつかの題材について,数名の児童との実験的なセッションを通しての検討を試み,その結果や実践されている学校の内容を参考に,展開例を挙げ,楽譜を掲載した。基本的には,音楽療法や感覚統合理論に基づく様々な治療法・教育方法の中から,音楽の持つ,情緒の安定や楽しさなどの効能を生かしながら,感覚への刺激や身体運動によって感覚器官の発達や精神発達を目標とするミュージック・ムーブメントを中心に展開例を作成した。子どもは音楽が好きである。教師の工夫一つで,楽しい音楽体験を味わわせることができる。子どもと教師が,共に音楽を楽しみながら学習や訓練を行うことは,それ自体が感情の共鳴でありコミュニケーションである。運動を誘発する音楽の特性は,知覚と行為の体験を可能にし,障害児の治療教育に効力をもつ。
- 1993-03-17