自閉性発達障害児のための関係行動分析マニュアル : 対人・対物関係面からの発達診断の試み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は,障害児の治療や教育をより効果的に進めるために開発された行動空間分析法の分析手順について詳細にまとめている。行動空間分析法は,対人関係行動・対物関係行動を主軸として障害児の行動分析を行う。自閉性発達障害児の場合,他者との関係がとりづらく,興味が著しく偏っているといった問題をもっているといわれている。このような自閉性発達障害児の対人関係行動・対物関係行動の評価がなされることは,子どもの状態を把握し,治療や教育の成果を把握する上で意味のあることと考える。行動空間分析法は,「行動を流れにおいてとらえること」,および「関係的脈絡の中で子どもの表出行動をとらえること」の二つの分析視点を設定している。これらの視点をふまえ,分析対象者が「いつ」「どこで」「だれと」「何をしたか」という一連の関係要素を一つのユニットとして扱っている。分析にあたっては,VTR資料を再生する形で行われ,5秒間の分析単位時間を設定し5秒毎に分析を行っていき,「いつ」という関係要素が把握される。また,プレイルーム内の空間分割を行い,「どこで」という関係要素を把握し,活動の中心と一致しているかどうか,あるいは主要なセラピストと近い位置にいるのかどうかが把握される。さらに,関係カテゴリーを設定し,対人関係・対物関係の把握をし,「だれと」「何をしたか」が把握される。このようにして得られた結果は,行動空間別集計表あるいは関係カテゴリー別集計表としてまとめられ,対象事例の対人・対物関係行動の発達の様相を把握するてがかりとすることができる。
- 北海道教育大学の論文
- 1993-03-17