保健所,市役所,町村役場における精神障害者に対する「集団的働きかけ」の現況 : 保健所に対する全国調査(1976)から
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概要
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1976年1月, 宮城県精神衛生センターでは, 保健所, 市町村における「精神障害者に対する集団的働きかけについて」の調査を実施した.その結果, われわれの考えている狭義の精神障害者に対する「集団的働きかけ」を行なっていると回答があったのは, 保健所実施分, 73ヶ所, 71グループ(実施率13.7%), 市町村実施分, 17ヶ所, 18グループ(実施率2.1%)であった.これらの「集団的働きかけ」の活動の開始年度は, 1974年から急増していることが示された.グループの名称は, 保健所実施分では「デイケア」と呼んでいるものが最も多く, 市町村実施分では「固有名」「名称は用いていない」が最も多くなっていた.開催年度は, 保健所実施分では, 多い方から, 月2回, 週1回となっており, 市町村では, 月1回が最も多く, また週単位で実施しているところはなかった.一回あたりの実施時間で, 最も多かったものは, 保健所実施分で3時間, 市町村実施分5時間であった.「集団的働きかけ」の期間の限定の有無については, 保健所実施分では32.4%, 市町村実施分では22.2%が限定期間を設けていた.また, その限定期間は, 6ヶ月, 1ヶ年が多かった.メンバーの参加人数は, 保健所実施分で平均9.8人, 市町村実施分で10.2人であった.また参加者の限定の有無については, 保健所実施分で42.3%が限定人数を設けており, 市町村実施分では限定人数を設けているところはなかった.さらに保健所実施分の限定人数を設けているところでは, 限定人数が10人のところが, 限定人数を設けている保健所の53.3%を占めていた.参加者の病名では, 分裂病を中心に構成されているところが多く, 性別については, 「男性, 女性半数ずつ」が最も多くなっているが, ついで「女性だけ」も, かなりの実施グループがあり, 全体としてみると, 女性を中心としているといってよさそうである.参加者の中心年令層としては, 20代, 30代が多く, 年令幅は11〜30才が多くなっている.中心学歴層については, 保健所実施分では, 多い方から, 高卒, 中卒の順であるが, 両者の差は少ない.それに対し, 市町村実施分では中卒を中心学歴層とするグループが72.2%を占めている.参加者の学歴差ではあまり差がないグループが多いが, 保健所実施分では, かなり差があるグループも32.4%となっている.また参加者の参加経路は, 保健婦, ソーシャルワーカーの担当ケースからが多く, ついで保健所実施分では, 担当ケースとともに病院から紹介者をあわせてグループを形成しているところもかなりある.「集団的働きかけ」に関わっているスタッフ総数の平均は, 保健所実施分で7.8人, 市町村実施分6.8人となっており, スタッフの職種では, 保健所実施分では, 保健婦, 精神衛生相談員, 栄養士が多く, 市町村実施分では, 保健婦, 栄養士が中心となっているところが多い.また臨床心理担当者は, 保健所実施分のみ, 常勤, 非常勤あわせて, 24.0%の保健所で関わっている.このようなことも, 「集団的働きかけ」のグループ名称, プログラム内容の違いなどに影響をおよぼしているといえよう.さらに非常勤スタッフだけをみると精神科医, 外来講師が多くなっている.経費については, 予算化されているところが多いが, 予算化されていないところも, 保健所実施分で23.9%ある.「集団的働きかけ」の目的としては, 社会復帰の促進・準備, 社会性を養なう, 交友の場・仲間づくりの場をあげているところが多い.プログラム内容については, 多くのプログラム内容があげられているが, その中で話し合い, 料理, スポーツ, ハイキングなどが多くなっている.問題点としては, "予算, 施設・設備, 人"の不足をあげているところが多く, また「集団的働きかけ」の方法についての問題点, 家族, 地域社会, 職場などについての問題点などもあげられている.「集団的働きかけ」の実施保健所, 市町村の今後の見通しとしては, そのような問題点をもちながらも今後も継続していこうとしているところが多い.また多くを占める「集団的働きかけ」の未実施保健所, 市町村での今後の実施予定については, 実施計画の具体化がなされているところは, 保健所で6.3%, 市町村で3.2%にすぎない, ただし具体化はしていないが実施の動きはある保健所が32.2%, 市町村9.1%あった.保健所における総訪問件数に対する精神障害者訪問件数の割合は, 全体的には, 「集団的働きかけ」を実施している保健所の方が, 未実施保健所にくらべて高い割合を示している.さらに定期的な精神衛生相談の実施状況では, 保健所において, 所内, 所外相談を両者実施していないところが7.3%, また市町村では42.6%が精神衛生相談を実施していない.
- 1979-08-31
著者
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