<学位論文>三次元咬合力の負担様式に関する研究
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概要
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歯列において咬合力が適切に負担されることは正常咬合の要件の一つに挙げられるが, これに関する実証的な知見はない。そこで本研究では, 顎口腔に機能異常を有さず, 咬合面に修復・補綴物のない有歯顎者15名を対象に, 随意的最大噛みしめ時に下顎歯列の各咬合接触面に発現した咬合力の大きさと方向を分析し, 歯列における咬合力の負担様式を解明した。本研究における咬合力の大きさは, 咬合力測定用感圧フィルムにて測定した。咬合力の方向は咬合接触面の法線方向とし, 下顎歯列模型咬合面の形状測定から算出した。咬合平面を水平面とする座標系を設定後, 各咬合接触面における咬合力の方向成分を算出し, 方向成分毎の合計値を各歯種, 片側歯列, 歯列全体について求め, これを分析した。その結果, 咬合力の方向成分はいずれの歯種においても垂直成分が最大となり, これと比較して前方, 後方, 頬側, 舌側の成分は著しく小さかった。また, どの方向成分も後方歯ほど大きい値を示した。一方, 咬合力の各方向成分は歯列の左右側でほぼ近似した値を示し, さらに歯列全体では前方成分と後方成分, 左側方成分と右側方成分が互いに近似していたこのように, 咬合力負担様式には規則性が観察され, とりわけ後方歯優位な前後的分布, 左右対称性, 咬合平面に対する咬合力水平方向成分の均衡は, 正常咬合の特徴であると推察された。