<原著>B16メラノーマへのGM-CSF遺伝子導入による肺転移の増強
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概要
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癌の転移機構には, 極めて多くの要因が関与しており, その詳細については未だ解明されていない点が多いが, 正常に機能している細胞が癌化し転移を形成していく過程で, 何らかのサイトカインを産生し, 自律増殖, 或いは種々の形質発現に関与する過程が存在する。中でもcolony stimulating factor(CSF)は, 多くの腫瘍細胞から産生され, その主体であるGM-CSFの産生細胞株は, 皮下接種により移植部位での発育に伴い, 肺への結節性転移が観察される事が報告されている。本論文では, 口腔癌患者より採取した血清を用いて, ELISA法により血中のCSF濃度を測定したところ, 予後観察により転移形成をするに至った患者で有意に高いことが示され, 転移形成能とCSFとの強い相関が確認されたことから, マウスGM-CSF非産生腫瘍であるB16LOMを用いて, マウスGM-CSF遺伝子を導入し発現させ肺転移形成性の検討を行った。その結果, 静脈接種による肺転移形成は, 遺伝子導入細胞で著しい増強が観察され, その産生されたGM-CSFは, 自律増殖因子としてではなく宿主側へ影響を与えていることが示唆された。
- 1994-06-30