「へ」格と場所「に」格 : 明治期の「へ」格の使用頻度を中心に
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概要
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「へ」格について、文学作品を中心に近代から現代までの使用状況を調査すると、次のような傾向があることが知られる。 1)「へ」格の使用頻度は近代から現代にかけて減少する傾向がある。 2)「へ」格の出現数に占める「への」の使用頻度は増加する傾向がある。 3)動詞ごとに場所「に」格と「へ」格を比較した場合、かつて「へ」格が優勢であった動詞でも、「に」格が用いられる傾向がある。 現代語の「へ」格は、位置変化動詞構文において、unmarkedの場所「に」格に対して、方向性や動作性といった点でmarkedであることを示す意味表示格として機能している。このことから、近代から現代にかけての「へ」格の使用頻度の減少は、場所「に」格が位置変化動詞構文の格体制に組み込まれて、「に」格全体が構造表示の側面を強めていったことの反映であると見なすことができる。
- 筑波大学の論文