「読譜」に関する一考察 : 「ドビュッシー:前奏曲集第1巻・第10曲」拍子記号に関する検討
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概要
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クロード・ドビュッシーは,自らの音楽を後世に伝える「楽譜」という媒介,あるいは「記譜」という作業にたいして,極めて慎重かつ厳格な音楽家であった。したがって, ドビュッシーの音楽を演奏する際に正確な「読譜」を行なうことは,全ての演奏者に課せられた義務といえる。ところが,「前奏曲集第1巻・第10曲」に記された拍子記号を,単純な数の計算上の論理に則して読譜したのでは,音楽としての自然な流れを損なう結果を招くことになる。よって演奏者には,機械的な「解読作業」ではなく,楽譜から読みとられた音楽が,音楽的コンテクストのうえで適切であるか否かを,常に見極めながら「読譜」を行うことが要求される。それは, ドビュッシーが単なる記号の集合体としての楽譜に託したメッセージ-音楽を,ドビュッシーの意志に照らし合わせながら,有機的に再創造してゆく過程にはかならないのである。
- 弘前大学の論文