魚卵のビテロジェニンの免疫電子顕微鏡的手法による標識
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概要
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魚卵の卵黄前駆物質であるビテロジェニンは雌性ホルモンの影響により肝臓において生産され,血流に乗って卵巣に運ばれたのち,次第に卵細胞内に集積されると言われている。筆者らはビテロジェニンが実際にどのような経過をたどり卵内に集積されるかを,免疫電子顕微鏡的手法を用いて明らかにしたのでその結果について報告する。メダカの雌約2,000匹の尾動脈から採取した血清から分離純化した抗原を家兎を用いて抗ビテロジェニン抗体をつくりこれを用いた。抗原抗体反応は,超薄切片を作成するための包埋操作の前におこなう,包埋前処理法と通常の包埋処理をしたのちの超薄切片上で反応をおこなう,包埋後処理法の2法によって行った。なお両者とも免疫反応後は,蛋白-A-金コロイドを添加しその所在を電子顕微鏡下で観察した。金コロイドは最初,鞏膜外壁にみられ,以後,色素顆粒層と卵膜との間に観察され,さらにのちになると,卵膜の穿孔部,卵細胞質内にも見られた。肝臓で合成されたビテロジェニンはこのように卵巣外から卵内に移動し卵黄形成に関与することが明らかになった。包埋前処理法と包埋後処理法を比較すると,後者の場合が反応が強く鮮明であった。しかし,後者の場合表層胞中に多量の金コロイドが観察され,これは従来までの知見から表層胞中には卵黄物質の存在が考えられないので,処理過程で抗体の移動が起こり偽反応が起こった可能性が大きい。したがって本研究の場合,包埋前処理法が優れ,信頼性が高いように思われる。
- 1991-03-31