琉球染織に関する一研究(家政学科)
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概要
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本研究の目的は1.琉球染織を文化史的に体系づける。2.球琉染織の色彩配合と, 現代の沖縄人の服色嗜好の関連性を追求する。3.琉球染織の消費動向の実態を把握する。の3項目である。実地踏査による資料, 文献資料, 及び口説等から次項の成果を得た。(1)第2次世界大戦前及び大戦後の琉球染織の分布はFig.1,Fig.2に示すとおりである。(2)琉球染織の文化史的特徴はa), 各々の染織の起源はTable 3に示すようにマーウー及びバサー, 紅型, 絣, 久米島紬, 花織の順になっている。b), 発展過程における特色は, 貿易品として重要だったことと, 琉球歴史にみられる税制度, この2つの事柄が琉球染織の発展を促した大きな要因となっている。c)琉球染織の用途はTable 5に示すとおりである。第2次世界大戦前と大戦後に分けて考察すると, (1)大戦前は社会の身分, 階級によって用途が決められていた。(2)大戦後の現在は, 観光関連産業と日本本土への輸出が主な用途になっている。(3), 琉球染織の色彩を考察するとa), 紅型の彩色は有らゆる色相を純色で配合し, 花織の彩色はいくらかこれに近く, 久米島紬がその次に来る。絣, 芭蕉布の彩色が最も純色から遠く, 大部分が単彩である。b)全色相が配された染織物, 純色, それに近い色が配された染織物の使用は少数の王朝士族に限られ, 人口の多数を占める一般平民の着用色は無彩色, 及びほとんどそれに近い色になっていた。400年以上続いたこの制度は, 現代の沖縄人の服色嗜好を支配する一要因になっている。(4), 琉球染織の消費動向は, a)市販状態はTable 5に示すとおりである。宮古上布以外は観光関連産業になっている。b), 消費量は島内消費, 島外消費とも上昇の傾向にあるが生産量の実際には海外需要に応じきれない諸問題がある。今回の研究は琉球染織を対象に, これらの文化史的一研究に, 現状の把握, という段階にとどまった。現状の諸問題にメスを入れていくことを今後の問題として, 琉球染織に関する研究を続行したい。
- 琉球大学の論文
- 1968-10-01