<論文>版画作品とその概念
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概要
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今, 私たちのまわりでは18世紀中頃の産業革命以来,実に多くの"もの"が生産され,そして同じ位消費されている。"もの"の多くは,工業製品として大量生産される中で,機能性と美の追求によってその種類や用途の幅を広げている。他方,絵画や彫刻やオブジェなど,機能性を伴わない"もの"も数多く制作されており,時代の変化とともにそれらのフォルムも変化しながら,美術館やギャラリー,そして家庭や公共的な空間にもインテリアの一部として展示されるようになって来ている。その作品としての"もの"は,制作する側の個性と設置される空間との個性の相乗作用によって,その場を変化ある"もの"として安らぎなど精神作用をもたらす状況を作り出すことが出来るのである。それらは,インスタレーションという今日的な空間を意識した視覚表現によって,新しい"もの"の意味を作り出している。それらは,時代の流れの中で現代を語る重要なキーワードの一片として,今日を捕らえることが出来るのである。本論は, 今日的な作品としてのもの,自己の版画作品による空間表現の概念を見詰めることにより,現代という時代背景とそれらが持つ意味について考察しようとするものである。
- 1993-10-30