<原著>佐藤大四郎の思想形成とその協同組合思想 : 『綏化県農村協同組合方針大綱』を中心に
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概要
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佐藤大四郎(1909〜43)とは, 日本帝国主義が捏造した傀儡国家「満州国」北部の浜江省綏化県において, 1930年代後半から1940年代初頭に, 橘樸の提唱する「新重農主義」を掲げて貧農救済を目的とする農村協同組合運動(合作社運動)を展開した人物である。佐藤は, 第一高等学校時代, 社会科学研究会のリーダーとして活動して除名処分を受け, その後, 日本共産青年同盟に加盟して地下活動を担ったが, 逮捕・起訴され下獄した。出獄後, 満州に渡り, 橘樸が主催する『満州評論』の編集責任者となったが, 橘樸の協同組合思想を実践的に発展させる形で合作社運動を展開した。「浜江コース」と呼ばれた, 佐藤大四郎たちの人道主義と徹底した貧農中心主義の農村工作は, やがて, 「満州国」の「国策」と対立し, 協同組合としての「許容範囲」を逸脱していった。そのとき, 岸信介ら日系官僚が掌握する「満州国」は, 佐藤大四郎らの運動を「在満日系共産主義運動」とみなし, 関東軍憲兵隊は弾圧を開始した。この合作社事件により, 合作社運動を担った活動家たちは大量に検挙・起訴され, 1943年, 佐藤大四郎は奉天監獄において獄死した。本稿では, 佐藤大四郎の思想形成を, マルクス主義の受容, 橘樸との出会いの中で考察するとともに, 「浜江コース」と呼ばれた満州における合作社運動の基本方針となる『綏化県農村協同組合方針大綱』に現れた協同組合思想を通して, 佐藤大四郎の人と思想について分析・考察する。
- 2002-12-01
著者
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