<論文>広告宣伝費の安定性の効果に関する実証研究
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概要
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本研究の主たるテーマは,広告宣伝費(以下,広告費と略)を安定的に支出していくことが企業の業績において,一つの有効性があることを実証することにある。企業活動において,あるいはマーケティング活動において,広告費は通常,短期的に捉えられる傾向がある。それは,広告はプロモーション活動の一部であり,売りに直結することが当然のごとく求められてきたからである。確かに,広告活動をプロモーション活動として捉えたならば,この考え方には妥当性がある。しかしながら,仮に広告活動をプロモーション活動より広い概念である「コミュニケーション活動」として捉えたならば,どうであろうか。決して短期的に売上に直結することだけが,広告の役割ではなくなる。広告活動はより広い機能と役割を与えられることになるといえるのである。本研究では,このように広告活動を企業の重要なコミュニケーション活動として位置づけることを大前提としている。そして中長期的な視点(間接的な売上効果の追求)で広告費を捉えることが,より重要であることを説いている。一見すると本稿の考え方では,広告は売りにつながらなくても良いように見えるであろう。しかしながら,本研究の実証分析の結果は逆である。つまり,広告費を中長期的な視点,換言するならば広告費を安定的に支出している企業のほうが,不安定な企業(ある意味で場当たり的な短期的視点の広告費支出)よりも,企業業績が良いという結果を得た。本研究の主張は,広告費を安定的に支出することが,結局は企業の業績(売上や利益)に良い影響を与えているという点である。そして,このような安定的支出をしている企業は,単に広告に対して売上効果だけを期待するのではなく,広告がより高い価値(企業価値やブランド価値)を創造する価値創造効果があることを十分に理解している企業であるといえるのである。
- 東海大学の論文