情報会計における経営意思決定モデルにかかわる一考察
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概要
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以上を要約すると次のようにまとめることができる。まず, 数学的意思決定モデルはあらゆる組織において利用されるであろうが, これらのモデルは従来取り扱われていなかったデータの収集と分析とを要求するものである。会計システムにおいては意思決定モデルの要求する情報ができるかぎり提供されなければならない。また, 会計システムを根本的に再編成しなければならない。なお, 意思決定モデルは利用者が経済人であるという仮定に基礎を置いているが, その作成にあたっては行動的考慮の影響を十分取り入れなければならない。また, 作成された計画モデルは業績評価ができるようなものでなければならない。次に, 数学的意思決定モデルがより広範囲に利用されるようになるにつれて, 会計担当者と経営者とは, 意思決定モデルと会計報告書との調整に関する重要な諸問題に直面する。すなわち, 計画意思決定と統制意思決定は増分原価, 現金フローおよび機会費用等の諸概念の利用によって行なわれるであろう。また, 事後の業績報告書が, 一貫した基準に基づいて作成されないときには, 経営者は伝統的会計モデルによって示された業績を支持する意思決定を行なうかも知れないが, これは往々にして誤った意思決定となることがある。その第1の例としては, 資本支出予算があり, そこでは経営者の意思決定は, 割引現金フローモデルにおける長期的意思決定のメリットに影響されるよりも, 現在および近い将来の損益計算書の結果にはるかに大きく影響されるのである。その第2の例としては, 在庫管理がある。在庫費用のうちで最も大きな費用は通常, 投下資金の費用であるが, それは往々付加原価(imputed cost)である。業績報告書において, 投下資金の費用を認識しない場合には, 経営者は意思決定モデルと一致しない1つの評価システムに直面することとなる。最後に, 最近15年間に多くの組織では, 会計システムの姿勢は, 外部利用者向け志向から内部利用者向け志向へと変化した。たとえば, 責任会計, 市場価格に基づく振替価格, 貢献利益報告等の抬頭をみれば, 内部経営者向けの会計システムの姿勢を知ることができる。この傾向は「報告書」でも述べているごとく, おそらく加速化されるであろうし, かつ, 外部報告向けの伝統的会計モデルの軽視につながるであろう。伝統的会計モデルは会計システムの1つのサブ・セットとなるであろう。その結果, 会計システムは, 最高に利用可能な意思決定モデルを提供し, そのモデルと一致した業績報告書により, モデルを包容する堅く結ばれた会計システムとなるであろう。しかしながら, このような会計システムの展開は, 利用可能な技法を利用する経営者と経済的・行動的意味を有する困難な諸問題を探究しようとする研究者との協同なしでは行なわれないであろう。
- 東海学園大学の論文
- 1974-06-30
東海学園大学 | 論文
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