<原著>女性生殖器癌肉腫における癌抑制遺伝子p16のメチル化
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概要
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目的:女性生殖器に発生する癌肉腫は稀ではあるが,臨床的には悪性度の高い腫瘍であり,組織学的には癌腫および肉腫の両成分を有する.これまでの研究で,著者らは,染色体9p21部位で癌肉腫に高頻度のヘテロ接合性消失(LOH)を発見した.9p21部位には重要な癌抑制遺伝子p16が存在しており,p16はヒト腫瘍において,高頻度に異常の見出される遺伝子の1つである.p16は,そのCpG islandのメチル化で不活化される事が多く,mutationやhomozygous deletionは稀である.今回,癌肉腫におけるp16異常の関与につき検討した.方法:18症例の癌肉腫症例のパラフィン薄切切片よりマイクロディセクション法にてDNAを採取し,解析に用いた.single-strand conformational polymorphism(SSCP)法によりp16mutationの検索をした.methylation specific PCR(MSP)およびmethylation-sensitive restriction enzyme digest PCR(MSREDP)法によりp16promoter,exon1およびexon2におけるメチル化の有無を検索した.また,combine bisulfite-restriction analysis(COBRA)法によりマイクロディセクトした癌,肉腫成分ごとにメチル化の程度を測定した.結果:癌肉腫においてp16遺伝子のmutationは見つからなかった.メチル化は18例中4例(22.2%)がpromoter領域,5例(27.8%)がexon1,15例(83.3%)がexon2に検出された.さらに,COBRA法によって癌と肉腫のメチル化程度がほぼ同じ約30%であるのに対して,軟骨肉腫成分は約20%であり,10%ほど低い事も見出した.結論:癌肉腫において癌抑制遺伝子p16のメチル化が高頻度で存在し,その部位は,promoter領域やexon1ではなく,exon2が主である.これまでに,exon2のメチル化はある種の進行癌や,少数の腫瘍に見出されている.よって,癌肉腫では,9p21のLOHとp16exon2のメチル化が,2-hitによるp16不活化の特徴的な機序と考えられる.さらに,メチル化の程度が,癌肉腫の組織分化能に影響している可能性も示された.
- 順天堂大学の論文
- 2001-12-25
著者
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