子宮頸部腺癌におけるムチン発現の変化
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概要
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目的 : 子宮頸管はムチンを産生する腺上皮で被われている。一般に腺上皮細胞は腫瘍化するとともにムチンの産生能が減弱ないし消失したり、また本来有するムチンとは異なる性質のムチンを産生することがある。本研究は非腫瘍性頸部腺上皮細胞に含まれるムチンの性格及び頸部腺癌の腫瘍細胞が産生するムチンの量的・質的変化を調べ、両者を比較することによって頸部腺癌の病理診断においてムチンの検索が診断の確立に有用であるかどうかを明らかにすることを目的とした。材料と方法:非腫瘍性子宮頸部100例と浸潤性頸部腺癌35例を研究材料とし、粘液組織化学とムチンコア蛋白のMUC1、MUC2、MUC5AC及び胃幽門腺型ムチンに対する免疫組織化学とを用いた。さらに癌胎児性抗原(CEA)、アミン・ペプタノドホルモンについても免疫組織化学的に検討した。また、ムチンを含む粘液の超微形態については透過型電子顕微鏡で観察した。結果 : 非腫瘍性頸部腺上皮が含むムチンは、全域でスルホムチン優位の酸性ムチンであった。MUC1はほぼ全細胞に存在したが、MUC5ACは浅層の細胞にのみ認められ、深層では認められなかった。MUC2、幽門腺型ムチン、そしてCEA及び内分泌細胞はいずれの部位でも認められなかった。頸部腺癌では総じてスルホムチン及びMUC1、MUC5AC発現細胞の減少がみられた。一方MUC2と幽門腺型ムチンの発現を示すものが認められ、MUC2は頸内膜型粘液性腺癌で65%、腸型粘液性腺癌で100%、類内膜腺癌で36%に発現しており、幽門腺型ムチンは内頸部型粘液性腺癌の80%に発現していた。幽門腺型ムチンを発現している細胞は、幽門腺型内分泌細胞を伴い、粘液顆粒の形態も幽門腺細胞に類似していた。結論:子宮頸部腺癌においてはムチンの発現に量的にも質的にも変化が起こっており、特にMUC2と幽門腺型ムチンの発現は腫瘍性変化を疑うべき重要な所見である。
- 2002-02-15