<研究ノート>日本の製造業における生産性実態の考察
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概要
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研究ノート筆者の国際的な仕事の場の経験によると、経済規模(力)が日本より小さい国においても、日本よりも豊かな社会、生活が欧州には存在する。それが何であるのかということを研究する中で、そこには企業経営政策実践における関心領域の広さがあると考えるに至たった。そこでそのための考え方を「社格:COMPANALITY 」(カンパナリイテイ、Company +personality の合成語)という言葉で表現することとした。本稿はその第一歩としての研究報告であり、社格優位の背景には、生産性の国際水準優劣があると考え、それを解明することを試みたものである。日本は太平洋戦争終結以降、歴史上希に見る飛躍的経済発展を遂げてきた。なかでも自動車産業はリーン生産を生み出し、世界の製造業から高い評価を受けて日本的生産システムとも呼ばれてきた。そこで、この論文においては、生産性の正しい理解のための考察、生産性の国際比較、リーン生産の生産性貢献評価によって、日本の製造業の国際比較劣位を確認した。そして、筆者の実践経験から、日本の製造業における大幅な生産性向上実績の実例を通して、先の国際比較劣位の裏付けをした。このことは大幅な生産性向上余地を潜在化させたまま、それを認知できないまま企業経営が行なわれているということである。そこで如何にすれば生産性向上が効果的に進められるかについて、その構成要素を3つに分けて、生産性向上方策としてのIE (インダストリアル エンジニアリング)という管理技術の有効性を確認した。こうした考察の結果、日本の製造業における生産性活動の特徴、その優位達成の方向が明確になったと考える。そしてインプット低減によって、日本の製造業が世界トップクラスの生産性水準に位置できることの確かな可能性を試算することができた。余剰労働力をかかえ、その結果国際比較劣位の低い生産性に甘んじ、それが低い収益性の原因となっている。
- 同志社大学の論文