<原著>アルツハイマー型痴呆における神経心理学的研究 : 書字能力の崩壊過程について
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概要
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アルツハイマー型痴呆(DAT)は, 潜行性の発症と進行性の経過を特徴とする.その障害は, 記憶をはじめ認知機能のさまざまな領域にわたり, 書字機能にも影響を与え, 書字障害が早期から認められると報告されている.DATにおける書字の崩壊過程について, 自発書字, 書き取り, 写字の3点から検討した.対象はDAT15例であり, 3か月ごとに約1年にわたり各書字検査を施行した.検査結果は病期別にI期群5例とII期群10例に分けて, 各々の成績を分析した.その結果, 自発書字が最も強く障害を受け, 初回検査時より遂行不能となる症例が多かった.経時的変化については各成績共有意に低下したが, その度合いは一様でなく, 書き取りよりも写字における低下速度が急激であった.漢字と仮名の解離については書き取り, 写字いずれも漢字が早期から障害され次第に仮名にも障害が及んだ.書字の誤謬分析では形態異常などの失行性要因や空間的配置異常・部分脱落などの視空間認知障害を示唆するものが多くII期群においては新造語やなぐり書き(scrawl)などの字体の崩れ・歪みが一層顕著になった.その他II期群においては書字機能の低下と知的機能の低下の間には有意に高い相関を示した.以上, DATでは書字機能の崩壊が確実に進行すること, 漢字が仮名に先行して障害されることが確認された.
- 2001-10-25
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