<原著>手術体位における顔貌の変化とその三次元解析
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概要
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顔面軟部組織は重力の影響を受け, 体位によって様々に変化する.とりわけ顔面外科領域においては, 術中体位である仰臥位での顔貌と術前術後の評価対象となる立位での顔貌との差異を認識しておくことが術中に補正すべき修正量の把握につながり重要である.従来, この手術体位における顔貌の変化は, 術者の経験に頼るところが大きく, 詳細な解析が成されていなかった.そこで本研究では, この顔貌の変化を三次元的に計測し, 顔面軟部組織の移動性に影響を与える様々な因子との関連性について検討した.対象は顔面に著明な異常のみられない50人で, 各々について性別・年齢・肥満度・顔示数を確認の上, 立位・仰臥位における顔貌を三次元表面形状計測装置で計測した.その結果, 立位から仰臥位への体位変換における顔貌の変化には, 大別して前方移動と後方移動が認められた.性差については, 前方移動において男性が危険率5%で女性に比しその移動が大きかったが, 後方移動において性差はなかった.年齢・肥満度・顔示数については, 前方への移動性は年齢と負の相関傾向を示し, 後方への移動性は年齢・肥満度・顔示数と正の相関傾向を示した.立位・仰臥位における顔貌の変化は, その顔面における軟部組織の移動量の多寡によりI〜IVの領域に区分可能であった.I〜IVの領域における軟部組織の移動性は, 骨格との関係, 軟部組織の重量, 皮膚の弾性, 表情筋の筋力, 等と密接に関係していることが示唆された.以上の結果から, 立位・仰臥位における顔貌の変化を標準化し, 患者個人の顔面軟部組織の移動状態が一目で分かる識別表を作製した.この識別表は, 症例検討において, 数量的に顔面軟部組織の移動性を把握でき, 有用であった.
- 2000-12-25