<原著>小児腎盂腎炎におけるκ light chainおよびIgAの尿中排泄率と尿円柱形成機序
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概要
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本研究の目的は小児腎盂腎炎患者の尿中に排泄されるκ light chain(KLC)とIgAの, Tamm-Horsfall glycoprotein(THGP)への結合性を明らかにし, 尿沈渣円柱形成ならびに腎障害との関連を明らかにすることである.分離精製したTHGP, KLC, IgAを用いてmicro enzyme immuno-assay(micro EIA)法によって結合性を検討したところmicro plate固相化洗浄しない場合にTHGPはκ light chain(KLC)あるいはIgAとdose dependentに結合した.しかし, micro plate固相化洗浄した場合や, THGPを結合させたSepharose 4B columnにKLCを流入させた場合はほとんど結合しなかった.このことから, THGPへのKLCとIgAの結合はその凝集力による弱いものであることが示唆された.各種糸球体性疾患患者の尿沈渣においてKLCあるいはIgAで染色された円柱の数はvesicoureteral reflux(VUR)患者に多く認めた.尿中のKLCあるいはIgAの排泄率は尿中の蛋白量と相関していた.腎盂腎炎に罹患している患者は, VURの有無にかかわらず各種糸球体性疾患患者より尿中のKLC排泄率が高かった.尿中のKLCあるいはIgAを多く排泄している患者では疾患の種類に関係なく尿中のKLCあるいはIgAで染色される円柱の数を多く認めた.VUR患者の腎瘢痕の程度は尿中KLCの排泄率と相関するが, 尿中のIgAの排泄率とは相関しなかった.VUR患者の尿中のKLC排泄率の増加は腎臓内でのKLC円柱形成のほかに腎瘢痕化にも関与していることが考えられた.
- 近畿大学の論文
- 2000-12-25