<原著>部分肝切除後の肝再生における線溶系因子の関与 : プラスミノーゲンノックアウトマウスを用いた検討
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概要
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部分肝切除後には線溶系によって制御されたextracellular matrix(ECM)が融解すると共に増殖因子の遊離と活性化が起こり肝再生を促進する.線溶系因子の重要な因子であるplasminogenはtissue-type PA (t-PA)やurokinase-typePA(u-PA)によってplasminに活性化され, このplasminは直接ECMを融解すると共にmatrix metalloprotainase(MMP)を活性化することによってECMを融解する.従ってplasminogenは肝再生の機序に深く関与していると予測されるが, その関与の繊細な機構は不詳である.そこでプラスミノーゲンノックアウトマウス(Plg-/-群)とこの野生型マウスを対照群(Wild群)として, 70%部分肝切除を施行し肝再生を比較検討した.部分肝切除後の肝重量回復率はWild群では実験期間中の14日まで徐々に増加した.しかし, Plg-/-群では初期に増加したが, 7日以降増加せず, Wild群に比べ有意に低下していた.DNA合成能は, Wild群では1日から5日までは増加したが, これ以降14日まで減少した.一方, Plg-/-群では1日から3日まで増加したが, これ以降14日までは減少し, 14日ではPlg-/-群でWild群に比較して有意な減少を認めた.肝細胞のアポトーシスはWild群では1日から3日までわずかに増加し, これ以降14日まで減少した.Plg-/一群では3日までほとんど見られなかったが, 7日から徐々に増加し14日で最高値となった.組織学的特徴としてPlg-/-群ではfibrin沈着を伴う散在性のcellular loss領域を14日で認めたが, Wild群では見られなかった.t-PA, u-PAとpro MMP-9の再生肝での発現は, Plg-/-群はWild群に比較して14日で増加していた.以上のことよりplasminogenの欠如により肝重量回復率やDNA合成能が低下し, 線溶系因子が部分肝切除後肝再生において重要な役割を果たしていると考えられた.
- 近畿大学の論文
- 2000-06-25
著者
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