<原著>実験的糖尿病性末梢神経障害の神経内血管に対するangiotensin IIの作用
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概要
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糖尿病性末梢神経障害の発症機序を明らかにする目的で末梢神経血管のangiotensin IIに対する反応性の変化について検討した.併せてangiotensin変換酵素阻害薬(cilazapril)の効果も検討した.実験的糖尿病性末梢神経障害(experimental diabetic neuropathy;EDN)ラットを作成し, 坐骨神経の神経血流速度(nerve blood flow;NBF)と電気生理学的検査(運動神経伝導速度, 混合筋活動電位)の結果についてコントロール群と比較検討した.EDN群では, NBFは有意に低下し, 神経伝導速度と混合筋活動電位の振幅も低下傾向を示した.坐骨神経に対するangiotensin IIの局所循環投与にて, angiotensin IIの血管収縮効果は, EDN群ではコントロール群に比して顕著であった.cilazaprilの局所循環投与では, EDN群, コントロール群ともにNBFの増加を認めなかった.一方, cilazapril経口投与では, EDN群において, 投与群のNBFは非投与群に比して有意に増加し, 4週後の電気生理学的検査でも改善を認めた.nitric oxide synthase(NOS)阻害薬であるNω-nitro-L-arginine(NOLA)の局所循環投与では, EDN群においてNBFの変化は認められず, cilazapril内服投与追加群でNBFが有意に抑制された.これらの結果から, EDNでは, angiotensin IIによる血管収縮作用が増強されており, angiotensin変換酵素阻害薬は, この状態を改善すること, その機序としてNOS代謝改善が関連している可能性が強いことなどが考えられた.
- 近畿大学の論文
- 2000-06-25