<原著>PC12神経細胞におけるCu/Zn-SOD活性阻害に伴うアポトーシスの検討
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概要
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脳虚血, 神経変性疾患で障害される細胞の一部においてアポトーシスが誘導されることはよく知られており, その原因に活性酸素種(reactive oxygen species : ROS)が関与することも報告されている.そのROSのうちヒドロキシラジカル(・OH), 過酸化水素(H_2O_2)がアポトーシス誘導の中心と考えられているが, ROSの中でどの活性酸素種がアポトーシス誘導に重要なのか明かでない.そこでスーパーオキシド(O_2^-)を消去するCu/Zn-super-oxide dismutase(Cu/Zn-SOD)活性を阻害することによりO_2^-によりアポトーシスが誘導可能か否かについて検討し, その作用機序についても一部検討を試みた.実験にはラット褐色細胞腫(PC12)を用い, Cu/Zn-SOD活性の阻害は, 銅キレーターであるdiethyldithiocarbamate(DDC)を用いた.DDC投与によりPC12細胞はアポトーシスの形態を呈した細胞死を誘導できた.またCu/Zn-SOD活性は有意に低下し, 細胞内H_2O_2は減少し, さらに低酸素培養によってこのアポトーシスが阻害されたことにより, 酸素ラジカル依存性アポトーシスと考えられた.このアポトーシスはnitro oxide synthetase(NOS)-inhibitor, 鉄キレーターの投与で出現率は変化せず, 細胞障害性の強いペルオキシ亜硝酸(ONOO^-), ・OHは関与しないことが示唆された.さらにnerve growth factorで細胞死が抑制されたことより, このアポトーシスは酸素ラジカルからの直接的なシグナルによりが誘導されると考えられた.また, このDDC誘導アポトーシスは, 抗酸化剤(グルタチオン前駆体)であるN-acetylcysteine(NAC)により完全に阻害され, しかもNACの抗酸化作用を阻害するbuthionine sulfoximine(BSO)を投与しても, NACの細胞保護効果は変わらなかった.さらに抗アポトーシス作用を示すと考えられているNF-κBに関しては, NACにより活性化されなかった.従って, NACの阻害機序として, 酸素ラジカルの消去あるいはNF-κBの活性化ではなく, 酸素ラジカルからのアポトーシスシグナルの一部を阻害しているものと考えられた.
- 近畿大学の論文
- 1999-06-25
著者
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