<原著>樹立化胃癌細胞の浸潤能に関与する線溶系因子と癌遺伝子c-mycとの関連
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概要
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癌組織中の癌細胞から高濃度に分泌されるurokinase type plasminogen activator(u-PA)と細胞膜上に発現されるu-PA receptor(u-PAR)との結合によって, 細胞表面に限局して線溶系の活性化(細胞性線溶)が生じている.一方, 癌細胞がある種の遺伝子異常に起因していることが近年明らかにされている.そのひとつのc-myc遺伝子は細胞増殖に重要な働きを有する癌遺伝子であり, 胃癌組織で比較的高率に認められる.このc-mycとu-PAの遺伝子のDNAのプロモーター領域にはphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)に反応するactivator protein-1(AP-1)結合領域が存在しており, protein kinase C(PKC)活性化経路を介して, それらの発現が調整されている.今回胃癌由来の樹立化細胞株NUGC-3にPKC経路活性化物質であるPMAを作用させ, 細胞浸潤能の変化および線溶系因子の発現を検討した.さらに, c-mycおよびu-PAのAP-1結合領域に結合する核蛋白の解析, ならびにそれらの核内転写因子の変化についても検討した.細胞浸潤能を測定した結果PMA添加群において有意に高い浸潤能が認められた(p<0.05).u-PA活性は, PMA添加群と非添加群で有意差が認められなかったが, フィブリンザイモグラフィーではPMA添加群で高いPA活性が認められた.PMA添加群ではu-PA, u-PARおよびc-mycのmRNAの発現が有意(p<0.05)に亢進していた.ゲルシフトアッセイではu-PAおよびc-mycのプロモーター領域に含まれるAP-1結合領域と核内蛋白が反応し, PKCの活性化によって, その反応が亢進することが示唆された.さらにスーパーゲルシフトアッセイによりu-PAのAP-1結合領域には主としてc-junが反応し, c-mycのAP-1結合領域には主としてc-fosが反応する事が明らかとなった.
- 近畿大学の論文
- 1999-06-25
著者
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