<原著>角膜創傷治癒におけるSPARCの役割について
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概要
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角膜創傷治癒におけるsecreted protein which is acidic and rich in cysteine(SPARC)の役割を検討するため, 角膜実質細胞のα-smooth muscle actin(α-SMA)発現とSPARCの関係を検討した.家兎角膜に穿孔創を作成し, 1週間後にSPARCおよびα-SMAに対する特異抗体を用いて免疫組織染色を行った.また, 継代培養した家兎角膜実質細胞の培養液中にSPARCやtransforming growth factor-β(TGF-β)を添加し, 細胞のα-SMA発現を免疫組織学的に検討した.さらに細胞のα-SMA発現量をwestern blotting法を用いて半定量した.正常家兎角膜では上皮および実質にSPARCの局在を認めなかった.一方, 角膜損傷部の角膜上皮の基底細胞層, 実質細胞およびその周囲にSPARCが発現し, 同時に損傷部実質にα-SMAを発現した実質細胞が認められた.培養角膜実質細胞の培養液中にSPARCを添加することによりα-SMAを発現する細胞数がSPARCの濃度依存的に増加した.SPARC添加によって, 角膜実質細胞が発現するα-SMA量が有意に増加していることがwestern blotting法で認められた.角膜実質細胞のα-SMA発現に対するSPARCの促進作用は, 抗TGF-β抗体の添加によって抑制された.以上のことから角膜損傷部に出現するSPARCは実質細胞を活性化してmyofibroblastに変化させ, 実質の創傷治癒に重要な役割を演じていることが示唆された.さらにこのSPARCの作用機序にTGF-βが関与していることが示唆された.
- 近畿大学の論文
- 1999-06-25
著者
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