<原著>ラット下肢複合組織移植モデルにおける循環動態と血行障害の評価
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概要
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遊離複合組織移植術では術後早期に5〜10%程度の確率で血行障害を来す.この血行障害は大別すると動脈閉塞と静脈閉塞の2種類に分けられる.特に後者による鬱血は, より回復困難な循環障害となり移植組織の壊死を招くことが知られているが, その機序については明らかにされていない.そこで下肢複合組織移植モデルを作製し, 動脈閉塞が静脈の血行に与える影響と, 静脈閉塞が動脈の血行に与える影響について経時的に検討を加えた.その結果, 下肢複合組織移植モデルにおいては大腿動静脈の血流量は著しく増加することが判明した.このモデルにおいて大腿動脈をクランプした時, 大腿静脈血流量は3秒で50%まで低下し, クランプ後50秒で血流は停止した.一方大腿静脈をクランプした時, 大腿動脈血流量が50%に低下する時間は16秒で, 80秒後に血流は停止した.このことから動脈閉塞では静脈の血流が急速に低下するのに反し, 静脈閉塞ではその後も動脈が流入しつづけ, 動脈の血流はゆるやかに停止することがわかった.すなわち静脈閉塞による循環障害は静脈側では鬱血を招き, 動脈側では充血を起こす2つの循環障害の関与が示唆された.組織の血流量が増加していることが, この過程を急速に発展させると思われる.本研究によって動脈閉塞より静脈閉塞が, 何故高度の循環障害の転帰をとるのかその機序が明らかになった.
- 近畿大学の論文
- 1998-12-25
著者
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