<原著>アトピー性皮膚炎における単純ヘルペス易感染因子の検討
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概要
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アトピー性皮膚炎(AD)における単純ヘルペスウイルス(HSV)に対する易感染因子について3つの観点から検討した.まず, AD罹患部皮膚片を器官培養し, その表面にHSV液を滴下し, 蛍光抗体法にて表皮細胞へのHSV感染の有無を観察して, HSVに対する角層のバリア機能を検討した.結果は, 角層を注射針で擦過処理した5例では全例にHSV特異抗原が陽性であった.一方, 擦過処理を行なわなかった6例中5例では陰性であった.次に, カポジ水痘様発疹症患者の両手および全身の非ヘルペス病変部からpolymerase chain reaction法を用いて, HSV-DNAの検出を試み, カポジ水痘様発疹症におけるHSVの全身への伝播様式を検討した.結果は, 10例すべてに両手と全身各所の非ヘルペス病変部から高率にHSV-DNAが検出された.さらに, HSVのレセプターであるヘパラン硫酸のAD罹患部における発現を酵素抗体法にて病理組織学的に検討した.結果は, ADでは11例全例に表皮細胞膜が染色された.一方, 対照の正常皮膚7例中5例は陰性で, 2例は一部陽性であった.以上の結果から, アトピー性皮膚炎患者がHSVに感染した場合, 掻破行動により全身にHSVが播種され, 同時に角層のバリア機能が破綻することでHSVが角層を通過し, さらにヘパラン硫酸を豊富にもつ表皮細胞にHSVが吸着しやすいため, ADではHSVに感染しやすくなると推察された.
- 近畿大学の論文
- 1998-06-25
著者
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