<原著>引き抜き損傷が加わった動脈における内膜の形態学的変化と血管閉塞の関連について

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概要

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• 切断指再接着術において, 引き抜き損傷が加わった動脈では, 他の受傷機転による損傷に比べて, 開存率は著しく低下する.その原因に内膜損傷の関与が示唆されているが, 詳細は未だ不明である.本研究では, ラット大腿動脈に引き抜き損傷を加えて, 内膜の形態変化が動脈閉塞に及ぼす影響について検討した.ラットの大腿動脈を使用し, 無牽引群(control), 70g牽引群, 80g牽引群, 90g牽引群, 100g牽引群の引き抜き損傷モデルを作製した.内膜損傷の状態は, 光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡を用いて観察した.その結果, 閉塞率は, 無牽引群と70g牽引群では0%, 80g牽引群は42.9%, 90g牽引群は61.3%で, 100g牽引群に至っては100%であった.形態的に引き抜きが加わった動脈では, 内膜に多発性の環状亀裂を認め, さらにこの亀裂部を詳細に観察した結果, 内膜の損傷形態は(1)断裂型, (2)剥離型, (3)弁状型の3つに分類し得た.本研究で, 引き抜き損傷が加わった動脈では, 内膜に多彩な断裂が生じるが, (1)や(2)の形態的変化では閉塞は起こらず, 弁状型の変化が動脈閉塞に深く関与することが明らかになった.

• 近畿大学の論文
• 1997-06-25

著者

• 藤井 俊一郎

  近畿大学医学部附属病院形成外科

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