<原著>各種吸入麻酔薬の虚血再灌流不整脈に及ぼす抑制作用の実験的検討 : ラット摘出灌流心を用いて
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概要
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近年, 吸入麻酔薬が, 心筋細胞内カルシウムの蓄積を抑制し, 虚血や再灌流時の心筋障害を防ぐ作用を有することが注目されている.しかし虚血再灌流不整脈における吸入麻酔薬の効果や機序については未だ十分に明らかにされていない.そこで本実験ではラットの摘出心標本を用いて, 現在臨床的に使用される4種の吸入麻酔薬, すなわち, ハロセン, エンフルレン, イソフルレン, セボフルレンの虚血再灌流不整脈に及ぼす影響を比較検討してその効果を明らかにすることを目的として実験を行った.雄性ウィスターラット(n=192,16群, 各12)の摘出心標本を用いてLangendorff法による灌流を行い, 冠状動脈左前下枝の結紮および解除による局所心筋虚血に引き続く再灌流によって発生する心室細動(VF)の発生頻度と持続時間を検討した.検討した全ての吸入麻酔薬で有意に虚血再灌流不整脈が抑制されたが, 同MAC(minimum alveolar concentration)の各吸入麻酔薬間の抑制効果の強さはハロセン, エンフルレン, イソフルレン, セボフルレンの順であった.また, ハロセンは心拍数を減少させたが, ペーシングによって心拍数を一定にした時もペーシングをせずにハロセンによって心拍数が減少した時と同等に虚血再灌流不整脈の発生を抑制した.ハロセンは再灌流時のみの投与群では, 虚血前からハロセンを投与した群に比較して虚血再灌流不整脈の抑制が弱かったが, 虚血再灌流不整脈を抑制することができた.このことから, 吸入麻酔薬は再灌流時だけでなく, 虚血の最中からすでに抑制作用を発現しているものと考えられる.本研究において, 現在臨床的に使用されている4種の吸入麻酔薬が虚血再灌流不整脈を抑制するが, 著者はその抑制の強さは等力価の比較で, ハロセン≩エンフルレン>イソフルレン≩セボフルレンの順であることを明らかにした.虚血再灌流障害に対する予防効果およびハロセンで示された虚血再灌流不整脈に対しての抑制効果は, 臨床使用に際して大きな特質となると考えられる.
- 近畿大学の論文
- 1996-06-25
著者
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