<原著>Polymerase Chain Reactionによる水痘-帯状疱疹ウイルス株間の異同判定と臨床的応用
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概要
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水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症に関するいわゆる分子疫学的研究は, 単純ヘルペスウイルス感染症のそれと比較して非常に遅れている.本研究では, polymerase chain reactionを用いてVZV株間の異同判定を, VZVゲノム上に存在するR1,R2,R4,R5の4箇所の反復配列の反復数とPst IN-K断片間切断点変異を解析することで試みた.はじめに前述のVZVゲノム上の5箇所の解析で株間の異同判定が可能かどうかを検討するために, 34人の帯状疱疹患者から個別に得た34株について解析した.R1は18bp単位が5〜7回と15bp単位が7〜12回の組み合わせより成り立っており, 最も多いのは18bp単位6回, 15bp単位10回の組み合わせで13株あった.R2は42bp単位が4回から13回にわたり, 8回が11株と最も多かった.R4は27bp単位が7回から18回にわたり, 最も多いのは9回で9株であった.R5は24bp単位をはさんだ88bp単位の構造の繰り返しが1回から3回まであり, 2回が28株と最も多かった.PstI切断点変異は切断点(+)が27株で多数を占めていた.また, 34株すべてについてVZVゲノム上の5箇所を解析した結果は, 株間で同一のパターンを示すものはなく, この方法で株間の異同判定が可能であることが示唆された.さらに本研究では, 臨床的応用を試みるため以下の11症例について検討した.帯状疱疹4例については病日別と病変部内の離れた部位から検体を採取して比較したところ, 同一患者内の各検体は同一株と判定された.また, 汎発性帯状疱疹では原発疹と汎発疹を, 眼部帯状疱疹では主病変と結膜から, 複発性帯状疱疹では2箇所の病変部から得た各検体は, 同一患者内では同一株であった.帯状疱疹は流行するという仮説があるが, 学校の寮内でほぼ同時期に発症した帯状疱疹2例から得た株は異なる株であった.一方, 家族内で発症した水痘2例は同一株によるものであった.以上のように, 本方法はVZV感染症の疫学的検討や発症機序の解析に有用であると考えられる.
- 近畿大学の論文
- 1996-06-25