イモチ病菌の分生胞子の発芽による附着器の形成とその病理学的意義について(農学部門)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1)イモチ病菌の分生胞子発芽による附着器の形成はツアペック培地(寒天6%)に於て形としては不完全なものであるが, 24時間培養でわずかに認められた。2)晩神力及びテテップの成長葉に於て24∿36時間後では前者の方が後者より附着器の形成がよく, イモチ病菌に対するイネの抵抗性に関係があるものと思われる。又最高分蘗期頃の成長葉では36時間後でも形成率は上昇の傾向が見られる。一方農林1号の苗葉上ではスライドグラス面上の附着器形成率と大体一致していて成長葉より良好である。3)附着器形成の最適温度は24∿28℃(90%以上の形成率)で, 最低温度は12∿14.5℃, 最高温度は36℃附近である。発芽の最適温度は附着器形成のそれよりもかなり温度範囲が広い。発芽は8時間後, 附着器形成は18時間後に於て90%以上の高率を示した。4)附着器は菌糸よりもリオゲン及び三共ボルドウに対して耐久性が大であつた。リオゲンでは附着器の生存限界は稀釈濃度400倍(倍量濃度)50分であるが, 三共ボルドウに対しては150倍(倍量濃度)60分間でも生存していた。5)58∿60℃の熱に対する附着器の耐久力は菌糸と同様乾熱よりも湿熱に対して小さい。前者では60分, 後者では10分が生存限界である。6)附着器の大さは7.8∿10.7×6.8∿12.3μ(硝子面上観察)で長さと巾との間に正の相関関係(相関係数0.684)がある。附着器形成率の良好な温度でも26℃に於ては附着器の大きさは大きく, 温度と附着器との間には有意差がある。胞子とそれから形成される附着器の大きさの間には低い相関(相関係数0.158)がある。
- 1961-09-01