ポリアミドの融解挙動 : (1)ナイロン11融液結晶化物の融解挙動について
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概要
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融液から等温結晶化したナイロン11の融解挙動とその微細構造をDTA法とX線法を用いて研究した.その結果, 高分子の融液結晶化物に対して一般的に知られているように, ナイロン11についても融解にあたり2つの吸熱ピークが観察される.これらのピークのうち, ピークIは結晶化条件に無関係に一定のピーク温度を示し, 結晶化時間とともにその吸熱量は減少する.一方, ピークIIは結晶化条件に対応して始めて観察される.最初, ピークIIはピークIよりも小さく, しかも低温側に見出される.しかしながら, 結晶化時間や結晶化温度が増加するにしたがって, ピークIIは吸熱量を増加させ, 同時にピーク温度は高温側に移動する.広角X線回折図形はα型構造を示す結晶の分子鎖の配列が結晶化時間や結晶化温度が増加するにしたがって, より完全な結晶になることを示す.しかもこれらの試料は部分的にfolded chain crystalを含むbundlelike crystalから成立っているように思われる.ピークIとピークIIの出現の理由を種々の実験結果に基いて議論し, その結果, ピークIIは結晶化条件に対応して生成した結晶の融解により, ピークIはDTA昇温中に起こる部分融解再結晶過程の結果生じると考えられる.しかしながら, ピークIを生じる領域は熱処理により容易に結晶化する領域, 或いは結晶化温度から-10℃に急冷するときに生じた結晶性の悪い領域が昇温中に部分融解再結晶を引き起こした結果であり, ピークIIが部分融解再結晶に直接関係すると決めることは早計である.