<論文>プラーナ文献に見る神像奉納儀礼

概要

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新しく作った神像を寺院に奉納する儀礼[pratistha]は,タントラ的要素の濃厚なヴィシュヌ系・シヴァ系の文献のみならず,幾つかのプラーナ文献にも見出される儀礼である。この儀礼に関しては既にKaneが彼の大著の中で,その概要を指摘しているが,最近ではフランスの新進気鋭の学者G. Colasがヴァイカーナサ派に所属するこの儀礼を,そこで唱えられるマントラの検討を中心として考察している。このマントラの分析と考察は既にKaneによって指摘されている。彼はこの儀礼で用いられるマントラを,ヴェーダ・プラーナ・タントラの3種に分類している。本稿では,この儀礼の次第を,特に神像を扱うプラーナ文献を主資料として,その各段階で唱えられるマントラと共に略述し,その儀礼構造の分析を行うと共に,ヴェーダ・マントラとプラーナ・マントラがどの段階で,どのように用いられているのかを考察することを骨子として述べてみることにする。ただし本橋では神像を中心として考察する為,シヴァ神のリンガ[liriga]奉納儀礼,もしくはリンガ用の儀礼を中心テーマとするシヴァ系のプラーナは考慮せず,どちらかと言えばヴィシュヌ系の方を調査資料として採用した。