[VIII] He イオン照射試料の表面形態変化
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概要
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53年度プラズマ研究所に走査型電子顕微鏡(Type S-450日立製作所)が設備された。表面観察中の油蒸気によるサンプルの汚染を避けるために,SEMの真空系を油拡散ポンプからターボ分子ポンプに変更した。その性能試験もかねて,イオン照射によりSurface Topographyがどのように変化するかを調べてみた。従来のこうした研究はArイオン(∿40keV)とCuの組み合わせが多いがPlasma-Wall Interactionとのかねあいから低エネルギーHeイオン(∿3keV)でサンプルを照射した。照射前のサンプル表面はほゞ鏡面仕上げとなっている。照射中のサンプル温度は約70℃で一定であった。以下にその結果を示す。Fig. 1(a)∿(e)は3keV Heイオンを10C/cm^2照射した多結晶Ni板のSEM像である。照射された部分は(a)でみるようにGrainの剥離が起こり光沢を失う。各々のGrainを拡大してみると,(b)∿(e)でみるようなCone, Ripple Structure, Mesaなどが形成されている。Coneは高さ1μm, 頂角15°∿25°の円錘状である。Rippleの幅は(e)でみるように0.2μm程度となっている。Fig. 2 (a)は3keV Heイオンを0.56C/cm^2照射した多結晶Mo板(電子ビーム溶解)のSEM像である。この程度の照射量では光沢の変化もほとんどなく,Grainの剥離はおきているが大きなTopography Changeはない。照射量が13C/cm^2に増加すると(b)のようにはっきりとした変化が低倍率でも観察され,(c)や(d)でみられるようなRipple StructureやCone形成を起こしている。しかし(d)のConeはNiの場合と形成状況が異なり,不純物によるものかもしれない。これらのスパッタリングによるPreferential Erosionは,Coneの場合,スパッター率の角度依存に関係すると説明されている。またRipple Structureはイオン照射による損傷で,Dislocation Networkが生成されると考えられている。しかしながら多結晶の場合,同量の照射をうけながら,Fig. 1 (c)で見られるように隣り合うGrainで一方はConeが,他方はRipple Structureができている。これは結晶面の違いによってTopographicalな違いがでてくるのであろうが,種々な面の単結晶で実験してみないとわからない。サンプルのNiとMoはそれぞれFCC, BCC構造であるが構造による違いははっきりしなかった。ただスパッター率がMoの方が1桁小さいためNiほど大きなErosionは受けていない。その他照射中の温度とか照射前のサンプルの処理条件によってもErosionは変化すると考えられる。また加速エネルギーに依存したブリスタリングとのThresholdも問題となる。これらの点が今後の課題である。54年度における我々のサブグループの目標は上記の実験でもちいたイオン源(40μA Heイオンmax.)をFig. 3のように改良して,種々の照射サンプルを作りその形態観察をSEMで行なう。同時に重量変化を大気圧の容器中に設置してあるGulbransen型マイクロバランスで測定スパッタ率を求めることである。もう一つとしては真空容器中に固定した同様なマイクロバランスに試料を釣り下げ,新たに製作するイオン源よりのビームを照射しながら重量変化を測定する装置を製作することで,現在設計中である。
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