コメント.イオンー電子衝突における複合状態
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イオン-電子系の衝突において, 短い波束を入射電子とする場合, その散乱を記述するS-行列の平均[numerical formula]は直接過程を表わす。ここでS°はHartreeポテンシァルによる散乱に対応し, 第2頃は, 入射ビームエネルギーの拡がりIの中に存在する準位間隔Dを持つ複合状態の寄与を与える。Acは, その状態による散乱振中に比例する量である。元のS-行列から上記成分を引き去ったものS^cの2乗平均が複合状態による共鳴の寄与を与える。[numerical formula]ここで, t, sは, ターゲットの始, 終状態のチャンネルを表わし, [numerical formula]である。1/2≤w_<ts>≤1はコヒーレンスの度合を表わす量である。上式によれば, 種々の過程の断面積の実験値を相互に関連させて, 種々のSに対するГcsを求めることが出来る。例えば, 弾性衝突(t=s)の断面積における共鳴の位置, 中, 高さ, 干渉から, Ec, Гc, Ac, <Гct>が得られ, 一方, 非弾性衝突の実験よりs≠tに対するГcsが得られる。これは, 自動電離確率に対応し, さらにサテライト線を放出する輻射確率とも結びつく。この方法を応用して, 2電子再結合や, 自動電離の確率を実験から求めることができる。それ故高電離イオンをターゲットとする衝突実験がこの目的にかなうように計画されることが望ましい。理論的基礎については, 岩波講座現代基礎物理学"原子核"の中にある河合光路氏執筆分が参考になる。