加速器制御エキスパート・システムの検討
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概要
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高エネルギー研究所放射光入射器における大型粒子(電子,陽電子)加速器の制御におけるエキスパート・システムの検討について述べる。従来,加速器の分野ではハード・ワイヤ方式で制御されていたが,計算機と電子技術の進歩につれて線型加速器では避けがたい電気的ノイズ等の悪環境やその他の問題を克服し今では極く計算機制御は当たり前のこととなった。しかし加速器の分野でも計算機制御が直面する問題はソフトウエアの開発,ソフト管理問題に加え,能率的,機能的運転の追及,運転の省力化,自動化等の問題がある。そしてそのためよりよい計算機,システム,開発環境,を絶えず求めつつソフトの改良やバージョンアップをして行くことが必要である。エキスパート・システムの検討はその一つである。人口知能の分野でもエキスパート・システムは実用段階に入ったと言われ(1985年はエキスパート・システム元年ともよばれる。),加速器制御の分野でもその制御の性格からこれまでの手続き言語による計算機システムよりエキスパート・システム開発用ソフトウエア・パッケージを使用したほうがよい分野(運転支援,オート・エージング,故障診断支援,運転パラメータの決定等)もあり,さらにソフトの生産性,操作性を上げる事が出来る等,より高度な運転,制御がますます期待される。しかし国内で言えば加速器制御は他の計算機アプリケーションに比較すると進んでいるとは言えない。まだエキスパートを採用した報告は一件も見当たらない。一方米国においてはABLE(automated beam line expert system)等の報告があり,ビームを必要なトレランスに調整するためのパラメータをエキスパート・システムによって得,マグネチックエレメンツを制御することでビームをフォーカス,デフォーカス,ベンディング及び加速している。当実験施設の2.5GeV線型加速器の制御についてはすでに各紙面で述べられているが[1,2], ここではこれまでのシステム上でのエキスパート・システム導入検討の状況について報告を行なう。エキスパート・システムとはいろいろな定義があるが専門家に代わって推論を行ない判断や診断をするもので,構成として推論エンジンを持ち知識獲得部によって知識ベースを持つものである。そのシステムを構築するためにツール・パッケージ・ソフトを使う。まずはその加速器用ツールの研究が必要で,次にエキスパート・システムに評価を与え何が,何処まで出来るかを探ることがまだエキスパート・システムに馴染んでないだけに大きなテーマである。
- 核融合科学研究所の論文