五嶋節の音楽教育への信念と実践
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
五嶋みどりは国際的に傑出したヴァイオリニストとして著名である。本稿は、彼女を幼くして並はずれた技能をもつヴァイオリニストとなしえた要因を探ろうとする試みである。とりわけ、世界の音楽界の頂点に立つ彼女の活動を可能にさせた家庭での教育がどのようなものであったのかを追究してみることにした。 高度の音楽的技術を生み出すには才能だけでなく、たゆまざる努力を重ねなければならないことはだれもが認めるところであろう。優れた芸術家であっても専門分野の最も高い水準の域に到達することの困難さは、音楽界においてもごく普通にみられる事象である。しかし、その分野におけるごく少数の抜きんでた存在として認められることを目指して、平生の日々において、若い人たちが技術の習得のために練習に精を出し尽力しているのは何によるものなのであろうか。 専門分野での最高峰の地位を切望するどの音楽家でも、大きな犠牲を払う心構えがなければならないはずである。多くの者が中途で脱落していくなかで、そのような代償をすすんで払い、それによって得るものは何であろうか。大抵の場合、子供がその素質をもって興味を示す事柄に子供を方向づけることは親の責任である。たとえ時には、親が子供をそのように導きながらもそれを強要していると受け取られても。 本稿では、みどりの母・五嶋節がわが子を幼児期から将来音楽家として大成させるため、その素質を伸ばそうとした教育のあり方を論じてみることにする。五嶋節は大学時代ヴァイオリンを専攻したが、結婚のためその志を果たすことができなかった。みどりは彼女の初めての子であった。そのため、長年いだいていた世界的なヴァイオリニストになる夢をわが子に託したのである。なお論文執筆にあたって援用した主な資料は、奥田明則著『母と神童-五嶋節物語』である。
- 2003-01-31
著者
関連論文
- 五嶋節の音楽教育への信念と実践
- 数字で考える音楽理論
- 014 子どもの歌の移り変りについて : (その1)時代の流れをみながら
- 一韓国女性の教育にかける人生 : その実践行動を探る
- 「ねこふんじゃった」をめぐる成立事情とその経緯について
- ピアノ奏法における「トーン・クラスター」と「チョップスティックス」の効用について
- 076 子どもの歌再考(その3)
- 160 子どもの歌再考(その2)
- 151 子どもの歌 再考
- ピアノの初歩導入教本について
- 124 鍵盤遊びの伝承とその意義 II : 遊びの表現と演奏技術
- 123 鍵盤遊びの伝承とその意義 I : 伝承の実態と遊びの変容
- 近代日本における子どもの歌の時代変遷 : その2 (大正・昭和期)
- 近代日本における子どもの歌の時代変遷 : その1 (明治期)