<総説>イネにおける花成制御の分子機構
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概要
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花成とは植物における栄養成長から生殖成長への成長相の切り換えを指す言葉である.イネにおいては花成のタイミングは主に基本栄養生長と感光性(光周性)により決定される.以前からその調節には複数の遺伝子座が関与していることは知られていたが,イネの花成制御の分子レベルでの調節機構については,詳細な解析が進められていなかった.最近のDNAマーカーの充実とイネ植物体への効率的な遺伝子導入法の確立に伴い,自然変異,あるいは突然変異体由来の光周期依存的花成制御に関わる遺伝子が同定され始めた.花成制御に関しては長日植物であるシロイヌナズナで最も解析が進められているが,イネで同定された遺伝子はいずれもシロイヌナズナで花成制御に関わる遺伝子とアミノ酸レベルで高い相同性を示すものであった.従って単子葉植物であるイネと双子葉植物であるシロイヌナズナにおいて花成制御に関わる因子は共通なものが多いことが示唆された.しかし相同な因子が使われている一方でそれぞれの特性は少しずつ異なっていることも明らかとなってきた.本稿ではイネ(短日植物)における花成制御にかかわる遺伝子について,現在最も解析の進んでいるシロイヌナズナ(長日植物)との比較も交えて解説する.
- 2003-03-31