<総説>硝酸同化系遺伝子の発現制御機構
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
硝酸イオン(以下硝酸と略)は植物, 藻類や菌類の主要な窒素源である。硝酸は, まず硝酸イオン能動輸送体(NRT)により細胞内へ輸送され, 硝酸還元酵素(NR)によって亜硝酸イオン(以下亜硝酸と略)に還元され, さらに亜硝酸還元酵素(NiR)によってアンモニアイオン(以下アンモニアと略)に還元される。続いてアンモニアはグルタミン合成酵素とグルタミン酸合成酵素によってアミノ酸へと同化される。硝酸同化を行う生物はNRT, NR, NiRの3つを必ず備えていて, 硝酸同化系の遺伝子群の発現は, 一般に硝酸(または亜硝酸)により活性化され, 窒素同化産物(グルタミンあるいはその代謝産物)により抑制されるが, 正負の制御のいずれが優勢であるかは生物により異なる。ラン藻においては窒素同化産物によるカタボライト抑制が強いため, アンモニアの同化を阻害しないと硝酸による活性化効果を見ることができないが, その他の生物では, 硝酸の添加によってNRT, NR, NiRの遺伝子の転写が誘導される。硫酸やリン酸など他の無機栄養物質の同化に関与する遺伝子はそれぞれの元素の欠乏によって誘導されるので, 基質による硝酸同化系遺伝子の誘導は特異な発現様式である。本稿では, 硝酸同化酵素の構造と性質および遺伝子発現制御機構について述べ, 硝酸同化系遺伝子の発現における基質による誘導機構の必要性と近代農業における施肥(硝酸塩)が引き起こす環境と農産物に与える問題について考察している。
- 中部大学の論文
- 2002-03-31
著者
関連論文
- 食虫植物トウカイコモウセンゴケとその両親の話 (特集 環境論、再出発へ) -- (生物多様性と環境--土岐川・庄内川流域圏の研究)
- 外部資金プロジェクト(生物機能開発研究所のプロジェクト研究概要)
- 2007-2009年に構築したハルリンドウHSIモデルの年間比較
- 東海丘陵要素植物群落の保全生態学的研究 : 保全・修復とその管理に関する研究(2) 中部大学恵那キャンパス内及びその周辺部の昆虫種調査
- 環境評価プロジェクト(生物機能開発研究所プロジェクト報告)
- 環境評価プロジェクト(生物機能開発研究所プロジェクト報告)
- 環境評価プロジェクト(生物機能開発研究所のプロジェクト研究概要)
- 課題 3. 植物細胞中および土壌・水中の硝酸イオン濃度から見た環境評価(環境評価プロジェクト)(生物機能開発研究所のプロジェクト研究概要)
- 第26回大会2006フォーラム : 分子生物学の未来
- 環境中の硝酸イオンがツユクサ(Commelina communis L.)の硝酸イオン蓄積量に及ぼす影響
- 硝酸同化系遺伝子の発現制御機構