<総説>昆虫の生活史とホルモン : 未開発生物機能を探る
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概要
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昆虫は現在の地球環境に最も適応して繁栄している生物群である。この繁栄は3.5億年の進化の過程で昆虫が獲得した生物改造によっている。とりわけ変態と休眠を生活史に組み込み, 生命の動的な展開と静的な安定を担保したことによる。変態は生息空間の変更による幼虫と成虫の空間的な住み分けであり, 休眠は最適環境下での計画的な発育停止による種間の時間的な住み分けである。変態や休眠は昆虫に特異的な多くのホルモン分子によって制御されている。昆虫ホルモンはステロイド系の抹消ホルモンと神経ペプチドホルモンからなり,前者は脱皮ホルモンと幼若ホルモンであり, 全ての昆虫種に共有されている。後者は多様な分子種で構成されており, その作用も多様である。前胸腺刺激ホルモンと休眠ホルモンはわが国で単離・同定され, 分子レベルでの作用が明らかにされている代表的なペプチドホルモンである。昆虫は残された唯一の未開の生物資源であり, 昆虫の特異機能の発現機構と開発利用に関する研究がわが国を先頭に世界的にも進められつつある。バイオ新時代を展望するために, 敢えて未開の昆虫世界を紹介した。
- 2002-03-31